【基板工場のKPI】良の中にも不良あり~直行率の重要性~

 私が子供のころは見かけなかったのですが、野手の野球選手の能力を図る指標として、OPSという指標を
見かけるようになりました。私も野球にはそんなに詳しくないのですが、出塁率と長打率を足した数字のようで、
これが1を超えると超強力バッターだとか。。。打率や打点、ホームランの数、出塁率みたいな従来の指標だけではなく、
新たに指標が出てくるということは、その指標が「野球選手としての能力の高さ」を図る基準として、より重要な
ものもしくは新たな視点を与えてくれるものということなのでしょう。
本日はそんな重要指標、「KPI」について考えてみたいと思います。
 
KPIとは、Key Performance Indicatorの略で、重要業績評価指標の略です。簡単に言えば、業務の最終目的を
達成するために中間的に管理する指標のこと。これといった決まったものはなく、業界や業種、部門や製品に
よってさまざまなものがKPIとして設定されます。最終的な目的の数値が出てから、仕事のやり方を変えても
遅いわけですから、様々なKPIを設定して確実に目標達成をするように先行指標的に最終目標と相関性が
高く、かつ数値把握が可能な基準を設定することが重要です。
 
基板工場におけるKPIにも様々なものがあります。但し、工場で一番大事なことは品質の高い商品を生み出すことです。
そのために確認するKPIは沢山あります。工程の品質を考えるうえでよく使われる指標に「良品率」という指標があります。
良品率の考え方は以下の通りです。

基板工場に目を向けると、大事な指標の一つとして「良品率」があります。良品率は大事な指標です。投入した商品に対する
良品率の割合で、良品が少ない工程は当然不良を検出できないリスクも上がりますから、この指標は特に重要です。では良品率が
高ければその工程は優秀な工程と判断できるのでしょうか?

良品率の他に、直行率という指標があります。こちらの考え方は以下の通りです。

良品率に似ていますが、少し違いますね。ここで、簡単にですが良品率と直行率の関係性について以下のようにまとめてみました。

シンプルに言うと、良品率について、手直しのない比率を乗じたものが直行率になります。手直しがないというのは、「その工程が
狙った品質の良品を一度で作り上げている」ということです。逆に言うと、良品率の分母には「工程自体では狙った品質の商品を創る
ことができず、イレギュラーな修正によって良品に格上げされたもの」が入り込んでいるということです。
ここに、直行率を見る重要な意義があります。結果的に良品を生み出す能力だけを判断するのであれば良品率だけを見れば十分ですが、
それだけでは高品質なラインと呼ぶことはできません。非手直し率が0%の良品率90%と50%の良品率90%では天と地ほどの差があります。
後者は45%、半分以下の比率でしか一発で良品を作る能力はないのです。直行率が低ければ不良が外にでる可能性もありますし、
手直しの稼働増とうによるコスト増加、検査工程のひっ迫による検査水準の低下のリスクがあり、短期に敵には良品が出ていても長い目で
見ると不良が発生するリスクは大きくなります。ですから、良品率だけでなく直行率も併せて判断することで、高品質な基板を製造するための
本質的な能力はきちんと押さえる必要があるわけです。

上記の指標の考え方や言葉の定義には様々なとらえ方がありますので、計算式自体が大事なわけではなく、あくまでも工程を判断するための
考え方の話として解釈頂ければと思います。

さらに、上記の考え方は、検査が確実にできているという前提の話です。KPIは本末転倒を生み出しがちです。例えば、工場における
工程の評価を上記の良品率や直行率だけにしてしまい、ほかのものは一切評価しないといった極端な状況を考えてみましょう。
趣旨が分かっていない工程担当者は、良品率を上げるために、不良のおそれがあるものを良品と判断してしまうかもしれません。
もしくは不良のおそれがある高難度の仕事を嫌がるようになるかもしれません。KPIの設定と言うのは非常に怖いものです。
一度設定すればそれが定点で評価されていきますから、数字を短絡的に上げるための抜け道がないように指標の意味を、工程担当者に
きちんと説明することが重要です。
 例えば、
・不良発生件数0を最重要目標に掲げ、その配下の指標として良品率や直行率を使うといった
 指標としての優先度を明確にする。
・KPIを設定する目的や意味を現場の担当者までしっかりと浸透させる。
 といった取り組みを恒常的に行ってはじめてKPIの設定は意味のあるものになります。

KPIは工場管理者や経営者が大事に考えている思想を、現場に届けるための重要な伝達方法の一つです。工場に限らず、自分たちで
設定している指標の意味や目的を考えてみるのも大事と言うことですね。